商品のレビューなど、お客様側から情報や感想などを投稿する機能がついている場合、また特殊な問題が生じます。それは、知的財産権(著作権)に関する対応です。
通常、お客様が書いた文章はお客様が著作権を有し、その改変・削除・利用・流用などは原則として許されません。しかし、ただお客様の行為にサイト運営を委ねると、お客様同士の言い争いや、お客様が勝手に誰かの文章をそのままコピーして投稿してしまうなどの問題が発生しかねません。
また、投稿したのがお客様でも、その「場」を管理しているのはECサイトですので、その「場」から第三者に飛び火して損害を与えたような場合には、サイト運営者が損害賠償責任を負うおそれがあります。正直、何が起きるかわからないというのが実態です。
ですので、きちんと運営できるように投稿する際には必ずECサイトが提示する条件に従ってもらうようにし、ユーザーが投稿したものについては、監視・削除・差し止めができるようなシステムにするのがよいでしょう。同時に、問題がある投稿について見ている人が簡単に運営者に通報できるシステムにすべきです。
システムをどう組むべきか
どのような機能を実現したいかにもよりますし、何を投稿させるのかによっても異なります。以下、テキストのみのスタンダードなレビュー機能を前提にして述べます。
まず、出来れば該当サイトの会員登録者に限って投稿できるようにするべきではないかと思います。これは、いざというとき本人への連絡ができるからです。もちろん、その意味であればコメント投稿の際に合わせてメールアドレスや電話番号を求めればよいという考え方もあります。
しかし、なるべくレビューなどの投稿を促進したいという場合には、登録会員だけに限るのはちょっと…という場合もあると思います。その場合には、まずいコメントかどうかを監視する体制と、すばやく削除する体制が必要になります。(すべて完璧に監視する義務が法的にあるのかといえばそうではありません。組織的体制に見合った相当な対応・監視をすればよいことになっています。しかし、相当かどうかを判断するのは最終的には裁判所ですし、なにより誹謗中傷が行われているサイトで購買意欲が促進されるでしょうか?なるべく早く対応するのが良いと思います。)
サイトを見ている人が簡単に運営者に通報できるシステムを入れることや、もしくはECサイト運営者の承認をもってコメントを表に表示するようにするという手もあります。また、ある程度キーワードを絞ってそれらキーワードが含まれる投稿(例えば、「殺す」や卑猥な単語など)については、投稿できないようにしてしまうと言うのも手です。
また、削除するかどうか迷った際に備えて、「表示を一時保留する」という対応がとれると非常に便利です。そのような機能をつけることも考えてみてください。
基本姿勢
まず、ECサイトがレビュー機能を付けるのはなぜでしょうか。口コミによるコンバージョン率の増加、サイト内回遊性アップ、PV/UUのアップ、ユーザーの顧客満足度の向上、運営者だけではカバーしきれない商品に関する情報の提供、実際に購入した方からのレビュー投稿で安心感を提供、レビュー内容を販促などに使いたい、などでしょう。
しかし、投稿者には著作権があり、その内容の編集・削除・利用・管理は、原則として著作権者である投稿者しか行えません。
他方で、管理するECサイトに投稿された内容が、第三者に対する誹謗中傷であったり、他のユーザーをだますためのいたずらだったり、言い争いがエスカレートすることで実際に殺傷事件が起きたらたまったものではありません。場の管理者として責任を問われるおそれもあります。
では、ECサイト側の判断で、投稿内容を勝手に消せるようにしましょうか。しかし、何を書いたら消されるかわからないようなところに、善意のユーザーが投稿するでしょうか。恣意的な運用がなされ不愉快な思いをしたユーザーが再び投稿し、もしくはお客様としてサイトを利用してくれるでしょうか。いかにECサイトが管理する場とはいえ、投稿の機会を与え場を解放し共有するのであれば、一方の恣意的運用がその関係を壊し、むしろ悪影響をも与えうるのです。もちろん、最終的には場の管理人としてECサイト運営者の判断になりますが、やはりある程度恣意的な運用をさけるため、一定の基準を設けて明示するのがベストと言えます。
ですので、基本姿勢としては、「あくまで投稿は投稿者の著作権に基づき保護されます。しかし、場の提供者としてこの場の秩序を維持するために、一定の基準を設けてそれに基づき投稿内容を削除することがあります。」というのがバランスがとれていて良いように思います。
利用条件をどう設定すべきか。
基本姿勢と一定の基準
まず、かならず投稿の際に条件を明示し、同意を得てから送信するようにしてください。これがなければ以下の議論は全く無意味になります。また、その同意を得る方法も、著作権が厚く保護されていることに鑑みてしっかり同意を得てください。見えないような小さい文字で条件を示しても何ら意味がありません。
まずは上記で述べたような基本姿勢を述べます。つぎに「一定の基準」ですが、これは以下のようなものになります。
- 他者の何らかの権利を侵害、またはその恐れがある場合
- 他者の名誉を毀損、またはその恐れがある場合
- 発言が元になり、当サイト上での秩序が乱れる、またはその恐れがある場合
- 客観的な事実に反する場合
- その他上記に相当するような重大な事態が発生、またはその恐れがあると当店が判断した場合
見てわかるように、究極的には店舗側の判断になります。しかし、要するにまともな投稿であれば運営者が削除することはありませんよというメッセージにはなります。その他思いつくものについてはなるべく列挙し、あらかじめ公開・明示し、投稿の際に同意を得るようにしてください。
レビューを販促などに利用したい場合
投稿の際に、利用するであろうことをなるべく列挙し、明記すること。そして、投稿の際にそれについて同意を得るようにしてください。
例えば、「投稿された内容は、当店の販促、マーケティングの資料として用いられ、またよりよい店舗づくりのための意見として参考にする場合があります。あらかじめご同意の上、投稿してください。」などです。
なお、事前に明示していないものに利用することは、法的に言えば無理があります。同意内容について、いつでも運営者が変更できるようにしておくことはもちろんですが、それは「運営のため必要な場合」に認められると考えられます。もちろんそれは運営者の勝手ですが、「販促のため」である場合に相当性が認められるかについては疑問です。どうしても利用目的について変更したいならば、直接同意を求めるか、メールで新しい規約と変更点を送り、同意できない場合には削除してもらうなどしても認められないおそれがあります。
対外的な規定
また、他のサイトに勝手に利用されては運営者も投稿者もたまったものではありません。対外的には、「当サイト上に掲載されているコンテンツは、当サイトまたは投稿者の財産であり、著作権法によって保護されています。投稿された内容については、投稿者に著作権が帰属します。その使用許諾について当サイトが諾否の判断を行うことや、投稿者の個人情報について開示を行うことはできませんのでご了承ください。なお、投稿の削除基準に該当するような投稿を発見し、削除依頼を当サイトにしたいという場合には当サイトで確認の上応じる可能性があります。その際は当サイトの連絡先にご連絡ください。」などとするべきでしょう。
その他
大変申し訳ないのですが、ここでは著作権その他知的財産権に関する実践的な解説をすることができません。それは私の力量不足でしかないのですが、著作権および著作権者は投稿者の数だけ存在し、利害関係が複雑なのです。法的に言って完璧なものはあり得ません。システムを把握し、顧問弁護士と相談の上規約を定めて、あとはリスクを承知の上で運用するしかありません。
結局は、投稿者が納得できるかどうかです。そして、どんなに厳格に管理・運用しても文句を言う人はいますし、不満を覚える人はいます。そこで、出来るだけ権利を保護し、裁判でも負けないような方向へと舵を切るか、それとも文句を言ってこない程度であればある程度の不満と法的リスクを覚悟して運用する方向へと舵を切るか、利益と思惑とかけられるコストとやりたいことと目的などによって多数の選択肢があるように思います。運営者次第です。
Comment feed